メンタルトレーニングの現場から最新情報

メンタルダウンを引き起こす扁桃体は、何に反応するのかが分かれば対策がとれる

 うつになっている人の脳の血流量を機器を使ってみてみると、大脳辺縁系と言う情動発現と関連する脳の部位に血流量が集中していることがわかります。

 

 大脳辺縁系の中心部にあるのが扁桃体で、ここは情動の発電装置と言われている脳の部位なのです。筑波大学の研究によると、扁桃体は胎内期で成長し3歳で完成すると言われており、そうすると3歳以下で形成されたシナプスパターンが今、刺激を受けているということになります。

 

 我々が「傾聴カウンセリング」では、メンタルを解決できないと結論付けたのはこうした科学的考察があったからです。私もかつては、相手の話を傾聴するとというカウンセリングを使ってメンタルの方のサポートをしていました。

 

 しかし傾聴カウンセリングで話す内容とは、過去のエピソード記憶なのです。エピソード記憶とは、たとえば昔お父さんに怒られて傷ついたとか、友達にいじめられたとか、などのことです。

 

 これらのエピソード記憶は、脳の中の海馬(かいば)に記憶されています。海馬とは、3歳以降に機能するのです。ということは、メンタルダウンの人は扁桃体が刺激を受けているわけですから、海馬記憶を引き出すカウンセリングを行うことは、効果的ではないと考えられるのです。

 

 扁桃体の記憶は、イメージの記憶です。私たちは、3歳以下の記憶はありませんが、記憶がないわけではないのです。エピソード記憶はありませんが、イメージの記憶はあるのですね。イメージ記憶とは、明暗、音、におい、皮膚感覚(温度、圧迫、湿度)、などの記憶です。

 

 なので、よくパニック障害などの方などは、狭いところに行くと突然不安が起きる、などのことがあると思いますが、それは扁桃体記憶なのです。

 

 たとえば、胎内期にお母さんがものすごいストレスを慢性的に感じていたとすると、子宮はたえず緊張し胎児を締め付けますから、それが扁桃体記憶を作るのですね。つまり、現在、狭い場所などに行くとその時の皮膚感覚などがよみがえり、感情がフラッシュバックすると言うわけです。

 

 このように扁桃体は、非言語の信号に反応するのですが、もうひとつ扁桃体には大きな特徴があります。相手の表情に反応する、という特徴です。筑波大学名誉教授・宗像恒次博士の研究では、扁桃体には「顔反応性細胞」

というものがあり、その人にとっての嫌悪系の顔表情(特に目)に反応し情動反応を引き起こすする、という特徴です。 これは以下のHPの研究でも、よくわかります。このページの真ん中あたりに、fMRIを使った研究があり、その人にとって「こわい」表情を見せると、扁桃体が興奮している様子がよくわかります。

独立行政法人 放射線医学総合研究所 の研究です。

 

 つまり扁桃体は、表情に反応するのですね。もともと扁桃体には、3歳以下の段階でどの表情に反応するかと言う、潜在イメージ記憶が刻まれており、それに合致した表情を見ると、激しく情動が引き起こされる、というのが宗像博士の研究結果です。

 

 生まれたばかりの赤ちゃんなのに、すでに人見知りの激しい赤ちゃん、ひとなつっこい赤ちゃんがいますね。それはすでに扁桃体記憶が形成されており、周囲の表情にその潜在記憶が反応しているからです。

 

 新型うつの人は、職場ではうつなのに、職場から離れると元気になって旅行に行ったりします。それは、職場ではその人にとっての嫌悪系の表情が存在し、その人の潜在記憶が刺激され扁桃体が興奮しているのです。

この人の潜在記憶を書きかえることで、扁桃体興奮を鎮めることができるのです。

 

 こういうことがわからないと、新型うつなどは全くの意味不明になってしまいますね。どうやって扁桃体記憶を書きかえるのか。かなり複雑な心理療法の手順がありますが、原理をざっくりと説明すると、こうです。

 

 その人の扁桃体にすでに刻まれている、嫌悪系の顔表情記憶に合致する表情に対して今、激しく反応します。扁桃体は表情に影響を受けるので、ということは、その人の扁桃体が鎮静化する表情イメージを見つけ出すことができれば扁桃体興奮は止まる、ということです。

 

 どの表情だったら、その人の扁桃体興奮が止まるのかは、脳科学メンタルトレーニングを約15時間程度行うことで、見つけ出していきます。

 

 うつになる人は、職場の人間関係が引き金になっている場合が多いものですが、上司や同僚、部下の表情に強く影響を受け扁桃体興奮が止まらなくなり、脳内にノルアドレナリンが高分泌になり、不安や緊張がたえず続くことで、夜が寝むれなくなり、うつになっていくわけです。

 

 ちなみにこの慢性ストレス状態が長期化すると、脳内に炎症が起こり神経細胞が破壊されていく、という現象が起こります。

 

 実は、音、嗅覚、皮膚感覚、などの非言語刺激は、自分の扁桃体が鎮静化する表情イメージを見つけ出すことで、これらの刺激にも反応しないようにできるのですが、それは私たち誰もが「共感覚」という能力を持っているためです。

 

 音、におい、皮膚感覚、味覚、内臓感覚、体の痛み、などの刺激情報は、頭頂葉にある多重感覚ニューロンという部位で統合され、目を閉じてそれらの刺激情報を感じると、脳内で視覚イメージに変換されるという私たち人間の不思議な能力があるのです。これは実際にイメージワークをしていただくと、だれもがすぐに実感していただけます。

 

 よって音、におい、皮膚感覚、味覚、内臓感覚、体の痛み、などの刺激情報を感じている時、私たちは無自覚に脳内で視覚イメージを見ていることになるため、よって扁桃体が鎮静化する、表情イメージを見つけ出すことで、これらの刺激に対する、反応もコントロールできるというわけです。

 

 以上のように、扁桃体の感受性をコントロールすることで、うつなどのメンタルダウンを予防し、休職者を約15時間のメンタルトレーニングで復職へと導いていく事ができるわけなのです。

 

 

 

 

2013/10/28

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